キモータランド

現実と虚無

ショーシャンクの空ニー

 

文:クレイジーピエロ・裕文

 

 

俺には3歳上の兄貴がいる。


地元で公務員をしていて、なかなかオモロに長けたやつである。

 

オモロといっても、

「休み時間に一発ギャグを披露する」、

「文化祭で漫才してキャーキャー言われる」

といった"動"のオモロではなく、

 

「授業中に隣のやつにジョンカビラのモノマネをひたすら続ける」、

「バレないように隣のやつの弁当を食べ続ける」

といった"静"のオモロを主戦場とするタイプである。

 

そんな"静のオモロ"を持つ兄貴も、内輪ネタで男友達の狭いコミュニティで大将となり、自信がついたらしく、先日の役所の飲み会で即興漫才のようなものをしたらしい。

 

「どうだった?」と聞くと
「欲張ると、ろくなことがない」
と儚げにつぶやいた。

 

そんな兄貴が

「お前、人生で1番手応えのあったツッコミ覚えてる?」

と聞いてきた。


続けて「俺、この間出ちゃったわ」と。

 

ツッコミまでのいきさつはこうだ。

 

兄貴が友達Aの家に遊びに行く時の話だ。


Aはその前日にAVをTSUTAYAで借りて、恥ずかしさからか、なぜか名作コーナーから『ショーシャンクの空に』を手に取った。

 

ショーシャンクの空に

1994年公開

冤罪で投獄されたティム・ロビンスが、模範囚であったモーガン・フリーマンと共に脱獄を試みる真のヒューマンドラマ。

ハンカチ無しでは見ることのできない、数々の賞を取った不朽の名作

 

そんな『ショーシャンクの空に』の下に、

10本のAVを重ねた状態でレジに持っていくのは逆に恥ずかしくないのか?

とは思うが、Aはホクホクと帰宅した。

 

そしてAはAVをたっぷり堪能した後、そのまま寝落ちしてしまったとのことだった。


起きるともう昼頃で、

兄貴から「あと5分で着くわ〜」とLINEが。
Aは慌ててAVを押し入れにぶちこみ、『ショーシャンクの空に』を机の上に置いた。

 

兄貴が到着し、「おいす〜」と挨拶の後、机の上の『ショーシャンクの空に』に目をやる。

 

Aはすかさず

「昨日TSUTAYAで『ショーシャンクの空に』借りちゃってさ〜めちゃくちゃよかったわ〜」

と流した。

 

兄貴は

「ふ〜ん、俺も後で見てみようかな〜」

と、DVDを手に取った。

 

兄貴はそこで気づいた。


実はAは慌ててAVを隠した際に、『ショーシャンクの空に』のケースの中に、AVのディスクをしまっていた。

 

つまり、兄貴が手に取ったものは

ショーシャンクの空に』のケースに入った

マジックミラー号 彼氏のチ○ポ当ててください!?スペシャル』

のディスクだったのだ。

 

兄貴はそれを見ながら


「『ショーシャンクの空に』とAV一緒に借りるってお前、上も下もビチャビチャじゃねーか」


とツッコんだのだ。

 

兄貴は終始ドヤ顔でエピソードを話した後に

モーガン・フリーマンより、よっぽど俺の方がフリーマンだったね」

と語った。

 

あ〜欲張った。