ポケットモンスター 巧緻の兵/拙劣の王
この星の不思議な不思議な生き物。海に森に町に、その種類は、100、200、300・・・いや、それ以上かもしれない。
ワシか？ワシはそんなポケモンを研究する博士、山口 ヴィラン博士じゃ。
山梨県の横山国際化学高校（偏差値51）を卒業したのち、清王大学 生物科（偏差値49）に指定校推薦で入学。大学院で応用バイオ学を専攻し、修士を取っておる。その後、このポケットモンスターサイエンスラボラトリ、通称PSLの和歌山支社にてポケモンの生態系を研究している、というわけじゃ。
いや～やっぱり、大手研究所はそれだけ全国に支社も多く、とりわけこの職種というのはフィールドワークも多いからのう、ワシは本当は首都圏勤務が良かったんじゃ。実家からも通いやすいところが・・・
「博士～！！こんにちは～！！」
おや、うるさいのが来たのう。こいつは愚劣坊（ぐれつぼう）。
今年10歳を迎えた近所のガキじゃ。この世界では10歳になった子供は、我々PSL所属の研究員から「ポケモン」を配布され、ポケモンマスターを目指す取り決めになっている。いったい何故そんなことを？・・・さあ？ワシには分からんな。進みすぎた文明が必要な職を奪ったんじゃないか。進路が決まっているというのはある意味で優しいからの。無能にとってはな・・・
そうじゃ、君もせっかくだから一緒にポケモンを見ないか？
愚劣坊にも説明せんといかんしのう・・・
「ポケモン見せて～～～！」
わーた、わーたわい。子供に配るポケモンは「御三家」と呼ばれる。
非常に人懐っこく、そして最終的には頼もしいほどに成長する。子供にとって、愛、試練、そして戦い、命の尊さ。その身をもって教えてくれるかわいらしい3種が選定されているんじゃ。
まずはこいつじゃ。
ポケモン（特定危険種第三類）
失意の瞳 ザイモン・アイズ
ピギイーーーーーーーーーーーーーーーーー！！！！！！！！！！！！！！！！！
No.201 失意の瞳 ザイモン・アイズ 体長11.2m 体重258kg
学名：Desprrezio Galten Monoeye
おおきな ひとみから はなたれる ひかりは
あらがおうとする きもち そのものを しょうめつさせるぞ。
＿＿＿ポケモン図鑑 p.371より抜粋
ポケモンには思いっきり人体に危害を加える種もおり、それらは「特定危険種」として管理されておる。第一類は致死性の毒を有する種。第二類は人類が耐えきれない程の熱や冷気を有する種・・・といった具合にの。
こいつはその中でも第三類に属する。第三類は図抜けた凶暴性を持ち、人類に悪意をもって接する。その攻撃的な性格で、人類を滅ぼしかねないとされている種じゃ。
え？なぜこんな危険なポケモンを子供に配るのかって？・・・さあ。滅ぶべきだから、じゃないか？ワシのような末端の研究員には分からない。ほら、仕事って暮らすためにやるものじゃからの。必要以上に考えることはもう、15年前に辞めたんじゃよ。
「うわぁ・・・かっけぇ」
（愚劣だな～）
次はこいつじゃよ。
ポケモン（特定危険種第四類、特殊警戒法対象種）
ペイン=悪僧=ザ・バース
ゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲ
No.491 ペイン=悪僧=ザ・バース 体長19.3m 体重680kg
学名：Pain Fratticmaltiarm Birth
もとは ほりょとして つかまった へいし。
くにへの にくしみが さいだいげん つのると
このすがたに なると いわれる。
＿＿＿ポケモン図鑑 p.702より抜粋
「特殊警戒法」とは、この国で定められているポケモン保護法律の一つじゃ。この法律によって定義される種については、いかなる理由があれその場で射殺できるのじゃ。種の保全とか、もう何も関係ない。我々の命を守るためにはそれしかないのじゃ。
なお、特定危険種の第四類は、伝播性じゃ。いわゆるゾンビじゃな、あまりにも強大な憎しみを抱えるために、周りの人間もこいつの憎しみにあてられ、頭がおかしくなるリスクという有意な統計が、学会で報告されているぞい。
「うわぁ・・・イカスなぁ・・・」
次じゃよ。
ポケモン（特定危険種第三類、国家指定殲滅対象）
鬱心中（うつしんじゅう）
クスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクス
No.848 鬱心中 体長34.7m 体重733kg
学名：Rocdiamelt Quitecx Death of Curse
ざんぎゃくな おうが おさめ
どれいろうどうを しいられた とある くにで
すべての じゅうにんが しんじゅうした。
そのときの おんねんが ぐげんかした すがた。
＿＿＿ポケモン図鑑（R-18） p.166より抜粋
国ひとつ分の怨念。それがこいつじゃ。もはやコイツはポケモンとかそういうものじゃないだろ、という議論が、昨今の学会では盛んに議論されておるな。
いやワシも半分はそう思うんじゃがの、そうやって臭いものに蓋をしたところで、こいつが怨念の塊である事実は曲げられないからな。解決になってないのじゃよ。こいつは世界のために、消さねばならん。それを学会の馬鹿どもに分からせるために、御三家のひとつに数え続けているんじゃよ。ワシはな、救世主なんじゃ。
なあ、分かるか？ポケットモンスターサイエンスラボラトリは、こいつを捉えて解剖、さらなる研究をしようとしている。鬱心中や、ペイン=悪僧=ザ・バースの持つ憎しみの力を、応用できたら何が起こる？ワシはな、ワシは、それを、止めるために、クス、なあ、聞いているのか？なあ！なあったら！！！！！！クス！！！！！クスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクス
「博士・・・・・・・・・・・」
それから博士は、体が黒く、大きく膨れ上がって、もうここには帰ってこなかったよ。なあ、博士。俺、俺さ・・・。博士の伝えたかったこと、なんとなくわかるんだ。
博士はポケモンを通じて、優しさ、平和・・・これを俺に教えてくれてたんじゃないかな。だからさ、俺。俺・・・サッカー選手になるよ。めっちゃサッカー練習して、そりゃもう、週2で練習してさ。コートに通って。それで、プロになるんだ！俺ならいけるよ。ありがとう、博士。見ててくれよな！
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